交通事故損害賠償請求権を有する者の破産申立て

 多重債務で破産の申立てをしなければとても生活の立て直しができないという状況だあるとする。つまり、まだ破産申立てはしていない。その方が交通事故の被害者となって損害賠償債権を有するに至って係争中、仮に破産申し立てをして破産手続開始決定が出されると、交通事故に基づく損害賠償請求権とその訴訟手続きはどのような取り扱いになるのだろうか。

 交通事故に基づく損害賠償請求権と一口に言っても、その内容は、 ①破産手続の中で本来的自由財産となりうる部分、②破産財団に属するが自由財産拡張が問題となる部分に大きく分かれる。

 財産的な損害に基づく損害賠償請求権は破産財団に帰属すべき財産であると言える。しかし、財産的損害のうち休業補償や逸失利益は給与の代替的性格を有しているといえるから、自由財産拡張を認めるべきであろう。また、被害者の治療に直接関係する介護費用や入院雑費も同様に拡張が認められるべきと考える。

 他方,慰謝料請求権は行使上の一身専属権であると考えられるから、金額が確定するまでは破産財団に属せず、破産手続中に金額が確定した場合には破産財団に帰属して自由財産の拡張ができるかどうかという問題となるが、精神的苦痛の填補という趣旨からすれば拡張が認められるのではないかと考える。

 このように、損害賠償請求権について係争中に破産申立てをした場合で、その損害賠償請求権の一部は財産的損害の請求、残りは慰謝料請求権だとしたら、破産手続の開始によりこの訴訟は中断して財産的損害の部分だけ破産管財人が受継することになるのかどうか・・・・・・。考え出すと非常に難しい問題である。