事件簿 ~第1回考査の思い出~

 平成14年の司法書士法改正により、法務大臣の認定を受けた司法書士に限り、簡易裁判所の訴訟代理業務及び一定の範囲の訴訟外の和解交渉代理業務を行うことができるようになった。
 この条件とされている「法務大臣の認定」を受けるためには、100時間以上の研修を経て、考査試験に合格することが必要となる。

 そして、簡裁訴訟代理関係の業務を行うための第1回認定試験が平成15年6月1日に行われたが、静岡県内では59名の司法書士が手を挙げた。浜松からは13名が手を挙げ、これをふたつのグループに分けて研修がスタートした。私はこのうちひとつのグループで、若手6名の司法書士と共に7名で100時間以上の研修に突入した。私としては、自分はもちろんのこと、7人全員を必ず合格させるとの思いでグループリーダーを引き受けた。
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 研修が終了するとともに、2時間の考査が行われた。考査は論述式ということだけが明らかにされていた。第1回目の考査であるのでどんな問題が出るのかは誰もわからない中で考査が始まった。実際に出された問題は、具体的紛争について法的論的を問うもの、訴訟技術に関するもの、訴訟代理人としての倫理を問うものなどであり、かなり練られた良問だった。

 私としてはほぼ満点を獲得できたものと自負していた。家族にも「不合格だったら司法書士やめるかな」と漏らすほどの余裕だった。考査の発表は、7月28日午後4時30分に法務省のホームページに公開し、また、8月中旬の官報に掲載するとのことであった。

 発表までの間、業界ではいろいろな噂が飛び交った。最初は「2割程度が不合格になるらしい」というような噂だったが、発表間近には「合格者は2割程度しかいない」という悲観的な噂まで出るようになった。

 そんな噂に引きずられ、満点獲得を自負していた私も、発表間近には「ひょっとしたら不合格になっているのではないか」「解答用紙に名前を書いただろうか」などと不安がよぎるようになった。しかし、事務所には毎日相談者が訪れ、「7月末から訴訟代理ができるようになるからちょっと待ってね」と待機をお願いした事件が既に40件近い。これで不合格になったら洒落にならない。それに、5月当初から当事務所の優秀なエンジニアに開発を依頼した債務整理や訴訟代理用のソフトもほぼその姿を見せ始めていた。不合格になったら3カ月間に支払った給料が無駄になってしまう。

 発表当日、法務省のホームページには私の受験番号が合格者として掲載されていた。あっけないというか、無味乾燥というか、受験番号「39」という数字だけが合格を告げていた。法務省よ、サンキュー。
 全国の合格率は78.9パーセント。そして、私のグループ7名はすべて合格していた。グループリーダーとしても面目躍如だ。そして、これで7人のサムライ(士)が誕生したわけだ。